2022年10月14日

津山商工会議所 臨時議員総会(11月1日) 松田欣也会頭の所信表明挨拶(全文)

11月1日の臨時議員総会(於 ザ・シロヤマテラス津山別邸)にて第32期役員(任期:令和7年10月31日まで)の選任が行われ、前期に引き続き、松田欣也会頭(マルイ)が津山商工会議所会頭に選任されました。

 

松田欣也会頭の所信表明あいさつ(全文)

 

 

 第32期の改選にあたり、只今、皆様から選任同意をいただきまして、改めて、会頭に就任しました松田です。

 個人的には4期目のスタートということになります。微力でありますが、全力で重責を果たしてまいりますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

 

 私が、津山商工会議所13代会頭に就任しましたのは、2015年3月1日です。ちょうど、「失われた20年」と言われた長期にわたるデフレ経済から脱却すべく、「アベノミクス」が動き出した頃でありました。

 

 就任からの7年8か月を振り返りますと、いくつかの歴史的な出来事もありました。

 年号が平成から令和に変わり、情報技術が急速に進展する中で、AIやスマートフォンが登場し、社会生活の利便性が飛躍的に向上した時期でもありました。

 

 一方、直近では、新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックの中で、サプライチェーンは崩壊し、世界経済システムは機能停止となり、また、ロシアによるウクライナ侵攻では、これまで積み上げてきた安全保障の枠組みが根本から覆される事態となっています。

 また、エネルギーや食糧の物流が止まり、効率化を求めて長年にわたり築かれてきた世界規模のグローバルチェーンも、不完全な状態に陥り、急激な物価高をまねいています。

 こうした世界規模の経済的ダメージも、最終的には、我々、地方の弱い立場にある中小・小規模事業者に最もしわ寄せが現れることを、あらためて痛感させられているところです。

 

 私は、会頭就任以来、「エコノミックガーデニング」を標榜してまいりました。

 いわゆる地産地消によって、外部要因に左右されない自立度の高い経済圏を創ろうという取組です。

 地域社会全体で企業を育て、企業は外貨を稼ぎ、地域社会へ還元するという経済活動のモデルです。米国のコロラド州リトルトンで実践され、リトルトンの奇跡と呼ばれ、市は大きく成長し、豊かで安定した地域社会を形成しています。こうした取組も、地域社会全体でローカルファーストを実践すれば、実現に近づくのですが、いまだ不十分です。

 32期においても、改めて、自立度の高い経済圏の形成を念頭に、ローカルファーストを推進してまいります。

 

 さらに深刻な課題は、静かな有事と言われる人口減少問題であります。

 温暖化の環境問題、長期化する米中対立等による世界規模のリスクなど、我々が直面する多くの課題の中でも、人口減少問題は、我々にとっては会社の存続にかかわる危機的な課題だと、私は思っています。

 こうした状況の中で、新たに挑む32期では、人口減少対策に資する我々が果たすべき役割として、第一に、「会員企業の強化を通して地域経済の成長する力を育てる」こと、第二には「地域社会と共に栄える地方創生」を実現することであろう、と考えます。  

 そのために、「4本の柱」を活動指針として位置づけ、会員の皆様とともに、挑戦してまいりたいと思っています。

 

 

 まず第1の柱は、生産性向上と多様な人材の活躍推進であります。

 我々中小企業がこれから業績を伸ばすうえで一番の障壁は、人材不足であります。

 生産年齢人口の減少に加え、都市圏への人材の流出も重なり、いまや極めて深刻な問題となっています。その重要対策の一つが、「生産性向上」です。

 

 最新のIT・デジタル技術の活用は、中小企業の生産性向上に極めて有効であることは、すでに実証済みでありますが、津山市を含め、いまだ浸透しておりません。

 

 そこで、32期では新たな取組として、IT活用が進んでいない60~70代の経営者をターゲットとした「はじめてのIT活用プロジェクト」を展開してまいります。

 市の産業支援センターや関連機関とも連携して、簡単で便利な「身の丈ITアプリ」を紹介し、各企業のやる気を引き出してまいります。

 

 また、具体的なプロジェクトの推進役として、新たに「デジタルシフト推進委員会」を設置し、会員企業のデジタル活用に関する課題解決を進めるとともに、AIなどを扱う専門人材の育成や関係職員のITリテラシーの向上に資する事業を展開してまいります。

 

 また、人手不足への対策としまして、「多様な人材の活躍」に向けた、女性や高齢者の労働参加や外国人材の活用促進の取組を引き続き推進するとともに、新たに「教育・人材育成委員会」を設置し、将来を担う産業人材の育成を推進するため、岡山大学や美作大学、高専との連携強化を図り、会員企業のトップによる特別講座や学生と経営者との懇談会など、商工会議所ならではの事業を進めてまいります。

 

 

 第2の柱は、円滑な事業承継と起業・創業の促進であります。

 津山商工会議所管内の経営者も高齢化が進んでおり、2025年には70歳を超える経営者が約1,200人にのぼり、その半数が後継者未定の状況になることが想定されています。現状を放置すれば、会員数は減少し、管内のGDPも減少することになります。

 これまで営々と受け継がれてきた価値ある事業や技術を、次世代に承継していくための支援も、商工会議所の重要な役割であります。

 また、経営者の代替わりを機に、環境変化への新たな挑戦を図る事例も全国では多く、「大事業承継時代」は、変革と創造の好機とも言われています。

 そこで、32期の事業承継・税制委員会では、市内の金融機関と産業支援センターとの連携による事業承継懇談会を設置し、大事業承継時代にふさわしい情報交換などの活性化を図ってまいります。

 また、現在の事業承継税制は、2023年3月までの時限措置となっているため、まさにこれからの本格活用に向けて、恒久化を求めてまいります。

 併せて、課題となっております「経営者保証」の廃止や第三者承継を後押しする税制措置の創設も、引き続き働きかけを強めてまいります。

 

 また、地域経済の持続的成長のためには、起業・創業の活性化による、時代の変化にあわせたビジネスの新陳代謝が不可欠であります。

 32期には、新たに「新事業・イノベーション委員会」を設置し、起業・創業の支援とともに、ベンチャー・スタートアップ企業の誘致に努めてまいります。

 また、特色あるオーナー経営者との交流連携を促進し、会員企業内のイノベーション創出を後押ししてまいります。

 

 

 次に、第3の柱としては、パートナーシップ構築宣言の推進であります。

 我が国の経済は、堅固に積み重なる石垣のように、大企業、中小企業が補完しあい、経済発展を遂げてきました。しかし、中小企業はサプライチェーンを支える重要な役割を担っているにも関わらず、弱い発言力の立場に置かれており、企業数も年々減少し、大企業との利益格差も拡大している状況が続いています。

 

 大企業と中小企業が必要なコストを公正に負担し合い、また、大企業が自らのサプライチェーンの重要な位置を占める中小企業側のデジタル活用による生産性向上の支援や、オープンイノベーション等での連携を、自社の問題として推進することで、サプライチェーン全体が強固になり、ひいては経済全体の成長基盤が確かなものになります。

 

 このように大企業と中小企業の新しい共存共栄の構築を訴えながら、32期では、多様な業種・規模の企業が会員である商工会議所の特性を活かし、活動の一環として積極的にパートナーシップ構築宣言の活用を推進してまいります。

 

 中でも特に、中小小売、卸売、サービス業は、近年のIT化、キャッシュレス化、流通構造の変化などへの対応が喫緊の課題となっており、サプライチェーンの中での大企業との補完関係の構築が重要となっています。

 そこで、32期では、新たに「流通・サービス・観光委員会」を設置し、小売業、卸売業、サービス業、観光関連事業者が直面している課題への対応を進めてまいります。

 

 

 第4の柱は、地方創生の推進であります。

 我々経済界が持続的な成長を実現するためには、津山市を中心とする県北地域の都市力の向上が不可欠であります。

 これまで地域唯一の経済団体として、インフラ整備、観光振興、地場産業の振興など、津山地域が抱える様々な課題について、提言を行ってまいりました。

 

 国は、岸田政権になり「新しい資本主義」を掲げ、地方創生総合戦略においても、デジタル、ヒューマン、グリーンを柱とする政策への支援及び投資を全面的に打ち出し、やる気のある地方公共団体を支援するとしております。

 

 そこで32期では、改めて、会議所活動の柱の一つである提言力の強化を図ってまいります。

 中でも、人口減少対策は急務であり、減少に歯止めをかけるためには、行政の施策と民間の取組が複合的に作用することが重要であります。

これから一段と人口減少のスピードがアップします。

 改めて、津山市の政策全般に直接作用する強力な提言を行ってまいります。

 

また、これから地方創生の基軸となるのが、脱炭素への取組です。

国は、昨年、「地域脱炭素ロードマップ」を示し、地方から始まる次の時代への移行戦略の中で、地域ごとの実施体制構築を求めております。

 

 こうした状況を踏まえ、32期では「脱炭素社会推進委員会」を設け、地域と国が一体で取り組む地域の脱炭素イノベーションの推進に貢献してまいりたいと考えています。

 

 以上、32期のスタートにあたり、「4本の柱」を示し、所信の一端を申し上げてまいりました。

 私が、会頭に就任し、7年8か月が過ぎましたが、この間、皆様が自社の直面する問題に必死になって取り組まれる中、商工会議所の活動や地域の活性化にも、熱心にかかわっていただいている姿を目の当たりにし、商工会議所のパワーの源泉は、こうしてご参加いただいている皆様の「ふるさと津山」への熱い想いであると、改めて、感激した次第であります。

 

 我々が今立っている経済的繁栄は、先人企業人が不断の努力によって困難を克服し、その繁栄を次の世代につないできたからこそ、もたらされたものだと考えます。

 これからは、我々、現役世代が、先人たちの信念と努力を将来の「新たな力」につなぎ、地域社会が未来に向かって飛躍できる環境づくりを積極的に進めなければならないと考えます。

 

 

 先日、東京フォーラムで日本商工会議所創立100周年記念式典が、天皇陛下のご臨席を仰ぎ、挙行されました。当日、大会宣言が採択され、スローガンは、「地域とともに、未来を創る」であります。

 津山商工会議所もこのスローガンのもと、次の100周年に向けて、会員企業とともに、何事にも挑戦し、将来に希望の持てる地域社会を創るため、その先頭に立って、この使命を果たす覚悟でありますので、皆様のさらなるご支援を衷心よりお願い申し上げて、あいさつとします。

 これからの3年間、どうぞよろしくお願いいたします。